凍てつくような冷たい部屋で、勇介は一人の朝を迎えていた。
大阪にいた頃は随分無茶もやったし、警察のやっかいになったことも一度や二度ではなかった。
しかし、この時期の留置所はさすがにこたえた。
まさか大学生になってまで、こんな場所で一夜を過ごすことになろうとは。
「あら」
「おう」
二ヶ月ぶりに突然アパートを訪れた勇介を、瑛子はまるで自販機に煙草でも買いに行ってたくらいの気軽さで迎えてくれた。
無精髭を生やし、頬肉の落ちた勇介を見ても動じることなく、いったいどこで何してたのと問いつめることもない。
そこには懐かしい心安らぐ日常があった。
ところが…
「嫌よ!あの子は嫌!」
美里の名前を口にした途端、瑛子は態度を豹変させた。
「何だよ。いつもとどう違うってんだよ」
「あんたがマジだからさ」