担当の看護師が検温に入ってきたのがいい潮時となった。



「ごめんなさい。まだ安静にしなくちゃいけないのに…」



瑛子は美里が飾った窓辺のガーベラを見つめたまま応えた。



「ふん。いい退屈しのぎになったよ。こんなにムキになってあたしに説教するやつぁ、めったにいないからね」



美里が長椅子に掛けたコートとバッグに手を伸ばした時、



「一つ聞いていいかな?」



体温計を脇に挟んだまま、瑛子が言った。



「何であんた、そんなに強くなったのさ」



「強くなんてないわ。でも、もしそう見えるのなら、亜弓ちゃんと…賢ちゃんのお陰…かな」



「賢、ちゃん?」



「ええ。愛するってことを教えてくれた、もう一人の人。とても素晴らしい人なの」