狭い病室の天井に笑い声が虚ろに響く。



美里はいたたまれない気持になり、でき得る限りの穏やかな笑顔を瑛子に向けた。



「ええ。確かにあれから連絡もないわ。でも、終わりだなんて思ってない。

会ってなくても、今は彼の気持が痛いほどわかるの。

ついこの間まではね、好きになって、告白して、デートしたり、キスしたり…そんなことの積み重ねが愛することだと思ってた。

でもそれだけじゃないんだって、ある人に教わったの。

離れていても、その人の幸せを心から願える。

自分が愛されていなくても、愛し続けることができる。

そんな愛もあるんだって。

そして、見返りを求めない分、それはとても純粋で貴い想いなんじゃないかって。

だから、わたしも彼を追いかけたりしない。あなたから奪ったりしない。

ねぇ、瑛子さん。わたし達もう少し冷静になって、いろんなことを一人で考える時間が必要だと思うの」



瑛子は黙っていた。