「そう思われても仕方ないわ。
でも、きっかけはどうであれ、つらい境遇にある子供達を救いたいという気持に嘘はないの。
それに、これはわたし自身の問題でもあるのよ」
「どういうこと?」
「わたし、大学院に進んで臨床心理士の勉強をするつもり。
虐待を受けたり、親の愛情に恵まれなかった子供達をサポートする児童相談所で働こうと思うの」
瑛子は美里の顔を穴の開くほど見つめたかと思うと、急に笑い出した。
「あはっ、あはははははっ…
バッカじゃない?
親が子を殺したり、子が親を殺したりが日常茶飯事みたいな世界だよ。
あんたみたいな甘ちゃんに勤まるわけないだろ」
「勤まるか勤まらないか、やってみなきゃわからないわ。
見て見ぬふりしてラクな道を選ぶのなら、後悔しても心の思うままの道を行きたいの」
「ほう。言ってくれんじゃん。
それで?あんたがどんな立派な人生設計ぶちまけてくれようが勝手だけどさ。
あたしは死んでも勇介から離れないよ。
いい?あんたとの恋愛ごっこはもう終わったのよ。あたしの勝ちね。
あははははっ…」