「弟がいてね。亜弓ちゃん、すごくかわいがってたんだけど、
その子とお母さんのために…
わたしが、お父さんと一緒に住むって…」
美里は声を詰まらせた。
「あの子を助けてあげたいのに、わたしには何もできない。
気分転換させてあげるくらいが関の山。
話だけでも聞いてあげたいんだけど…それも正直怖いの。
つらい思いをさせて心の中を吐かせても、結局何の解決策も出せないまま、もっと彼女を傷つけるような気がして…」
瑛子はフンと鼻で笑った。
「その子、ときどき遠い目をする時があるの。
あなたや井ノ原くんと同じ目よ。
その目が何を見てるのか知りたいの」
瑛子は短く息を吐き、軽蔑の眼差しで美里を見上げた。
「その可哀想な亜弓ちゃんを利用するんだ?」