言い過ぎたと気づいた時には遅かった。



瑛子はワナワナとからだを震わせた。



「ええ、ええ。満足よ。失うものなんて何もないわ。あたしの命なんてクソ喰らえよ!」



美里は焦った。



これ以上、瑛子を興奮させてはいけない。



何か他の話題を探さなければ…



病室を見渡し、窓際の花瓶に目をとめた美里は、手にした花束の包みを剥がしながら言った。



「亜弓ちゃん…って子がいてね」



瑛子は取り合わなかったが、美里は構わず続けた。



「学童保育の付き添いで知り合ったんだけど、とってもきれいな子なの」



「それが何なのよ」



「お父さんがね、普段はおとなしい人なんだけど、お酒飲んだら暴力ふるうらしくて。

結局、離婚することになったんだけど、その父親が、どちらかの子を渡さないと離婚には応じないって」



美里は花瓶に水を入れ、ガーベラの花をそっと差した。