「何?これ」



「元気になるおまじない…だって」



「おまじない?」



不可解な表情で立ちつくしている亜弓を見て、美里はすぐに後悔した。



こんなことしなきゃよかった。



少しでも慰めになればと思ったが、彼女の抱えている苦しみはこんな飴玉で癒されるようなものではない。



「つまんないよね。こんなの、いらないよね」



顔を赤らめ、亜弓の手から包みを奪い取ろうとした時、



「いいよ。もらっとくよ。サンキュ」



亜弓は美里の手を振り払い、そのまま改札口へと走り去った。



亜弓ちゃん、ごめんね。



これが今、わたしにできる…精一杯…。



人混みに消えてゆく小さな肩を追いかける美里の目に、涙が光っていた。