亜弓はようやく硬い唇を緩めた。



「マジなんだ」



「うん。賢ちゃんに『それは勇介のためか』って聞かれて、やっと一本に繋がったの。

バカみたいにあの人の遠い目を追いかけてた自分と、本当にやりたい何かを見つけようともがいてた自分が」



「ふふっ。やっぱ先生、変わってるよ。博士みたいないい男振ってさ。後できっと後悔するよ」



「はぁ~、するかも~」



美里が頭を抱えると、亜弓はさも可笑しそうにクツクツと声を立てて笑った。