亜弓は唇を引き結び、押し黙ったまま、美里の真っ直ぐな目を見つめ返した。
偽善なのか、マジなのか、美里の真意をはかりかねているような目だった。
「わたし、将来は児童相談所で働こうと思うの。
親という絶対的な存在に抵抗することもできず、愛を求め続ける子供達の声を少しでもすくってあげたい。
世間知らずのわたしに、そんな大変な仕事が勤まるのかどうかわからないけど。
でも、きっといつか、あの遠い目が何を見つめ、何を感じ、何を求めているのかわかった時…
その時には少しはあなたと対等に話せる日がくるんじゃないかって…」
美里はグラスの底に残っていた水を飲み干し、照れたように微笑んだ。