亜弓はちょっと意地悪く、美里の目を覗き込んだ。



「だから、あたしに狙いをつけたの?」



「あなたを初めて見た時、電車の窓から景色を見ていた遠い目に、あの人の遠い目が重なった。

それで、あなたに興味を持ったのは確かよ。

境遇を知って同情したのも確か」



亜弓の顔色がさっと変わった。



「利用されるのはごめんだね」



「そうよね。彼もそんなやり方を一番憎んでるわ。

でも、信じて。あなたを利用するつもりなんてない。

一方的かもしれないけど、亜弓ちゃんはわたしが本当に心を割って話せる親友の一人なの。

年も生きる世界も違うかもしれないけど、あの嵐の中で話した時からずっとそう思ってる。

きっかけが不純だから、誤解されても…仕方ないのかもしれないけど…

でも、あなたのことが心配な気持に嘘はないの」