「そぅなんだ…博士、行っちゃったんだ…」
亜弓は虚ろな目で呟いた。
賢は亜弓にとって、たった一つの心の拠り所だったのかもしれない。
例え、彼女の小さな恋が叶わなくても、賢が近くにいてくれるというだけで、どれだけ心強かっただろう。
その賢が手の届かない所へ行ってしまった原因は自分にあるのだ。
美里は亜弓の目をまともに見れず、小さく頷いた。
亜弓は黙ってクリームソーダをストローでかき回している。
鮮やかなグリーンが少しずつ白く濁っていく。
「それでいいの?」
亜弓がぽつり呟いた。
「えっ?」
「博士を一人で行かせちゃって、本当にいいの?」
言葉に詰まった美里に、亜弓がたたみかける。
「嘘をついたから怒ってるの?」