見たこともないようなご馳走を前に、亜弓はしばらく落ち着きなく辺りを見回していた。
が、一皿目を平らげた頃にはすっかり年相応の食欲を取り戻していた。
その後、何度もピストン運動を繰り返し、最後に大好物のチョコレートケーキを平らげ、
「あー、もう入んな~い」
と、テーブルの上に突っ伏した。
コーヒーをすすりかけた美里は、思わず吹き出した。
「失恋にはやっぱこれよね~」
「あ…そうだ。何か話があるんだったよね。失恋ってどういうこと?誰が?誰に?」
美里は、高尾山での一件以来の出来事をすべて亜弓に話して聞かせた。
そして、賢が手紙を残し、南米へと旅立ったことも。