美里はお昼ご飯を奢ることを口実に亜弓を連れ出し、新宿の都庁前にある高層ホテルへと向かった。



一年で一番華やかな季節を迎え、ホテルのロビーはお城のようにきらびやかに飾り立てられている。



「先生、ここ、めっちゃ高そうだよ」



亜弓がすり寄ってきて、小声で耳打ちした。



「大丈夫。最上階は無理だけど、地下のランチバイキングなら2500円。小学生は半額!お得でしょ?」



「でも、あたし、こんな恰好だし…」



亜弓はブカブカのオーバーオールと、爪先の擦りきれたスニーカーに目を落とした。



「ホテルだからって気後れすることないのよ。今やセレブだってドレスダウンがトレンドなんだから。ほら、胸を張って」



店内のビュッフェには世界中の料理が所狭しと並んでいる。



イタリアン、中華、エスニックに日本料理。



色とりどりのスープ、シチュー、カレーに新鮮なサラダやフルーツ…



「うわぁ、すごい!」