それは十数枚にも渡る長い手紙だった。
最後の方は涙で滲んで字がよく読めなかった。
「賢ちゃん…」
美里は次から次へと、とめどなく溢れてくる涙を止めることができなかった。
ホームに着く度に吐き出された乗客が、美里を一瞥しては改札口へと消えていく。
そうやって何台もの電車を見送ったが、涙はいっこうに止まらない。
心配そうに駆け寄った幼い女の子が、暖かそうなピンクのフード付きマントのポケットから何か取り出して美里に差し出した。
その小さな掌にちょこんと載っていたのは、苺模様のセロファンに包まれたキャンディ。
「はいどうど。アユが泣いたらね、ママがいつもくれるの。元気になるおまじないだって」
美里は泣き腫らした顔を上げ、少女のリンゴのような紅い頬を呆然と眺めた。