「ほっとけ。どうせ、またトンボの交尾にでも失敗したんやろ」
「トンボのHかぁ。実に興味深い」
言葉とは裏腹、修司は早速煙草をくわえると、勝手にテレビのリモコンをパチパチやり出した。
「それはそうと…賢、おまえ、あっちの方はいつからご無沙汰や?」
ハルさんは品性の欠片もない分厚い唇をニヤリと緩め、いつものように賢をからかい出した。
気は優しくてお人好し、思い込んだら一直線のハルさんだが、そっちの方にまるで疎い賢のような純朴な青年をからかうのが彼の歪んだ趣味の一つだ。
『あっちって、どっちや!』
いつもならすぐムキになり、プロレスが始まる所だが、今日の賢には敢えて逆らう気力もない。