だけど、あなたの唇からは何も伝わってこなかった。あなたの魂を感じることはできなかった。

脱け殻のような冷たいからだを抱きしめながら、あなたが愛しているのは俺じゃないと思い知らされました。

俺は人に誇れるようなものは何一つなく、平凡な人生を送ってきました。

それでも、人を妬んだり、姑息な手段に訴えてまでほしいものを手に入れようとしたり、そんな浅ましい真似はしてこなかったつもりです。

それなりに人を好きになって、恋も何度かしました。女心をときめかす言葉もテクニックもないけど、その人の幸せを心から願うのが俺の精一杯の愛情表現でした。

だから、勇介のあの言葉は許せなかった。

人の気持を傷つけてまで、自分のほしいものを手に入れようとするやつは許せない。

そんなやつに大切な美里さんを渡すわけにはいかないと。