ここへ来た時、もうあなたの頭の中には亜弓ちゃんのことしかなかったはず。

俺は最初から勝つ見込みのある賭けをしたんです。

それでも、嘘をつき通すことを最後の最後まで迷っていました。

だけど、あなたが勇介を信じたいと言い切った時、俺の心は決まりました。

もう二度と美里さんをあいつには渡さないと。

だから嘘をつきました。それは自分でも驚くほどススラと。

でも、あなたを渡したくない一心で、余計なことまで口走ってしまいました。

アールグレイの件です。

昨日は動揺していて気づかなかったかもしれないけど、あなたは自分から勇介と待ち合わせしてるなんて言わなかったはずです。

そう、俺は上手に嘘をつける人間じゃない。最初っからメチャクチャな賭けだったんです。

あなたを追いかけて、抱きしめて、唇を重ねた。それは、何度も何度も夢に見たシーンだった。

最高の幸せをこの手でつかむはずだった。