賢ちゃん…



ツリーに散りばめられたオレンジ色の光がぼんやりと滲む。



美里の潤んだ瞳から、大粒の涙がポロリとこぼれ落ちた。



賢は美里の頬を両手で包み込むように押さえると、流れる涙を親指の腹でそっと拭った。



「泣かないで…」



そう言ったのは賢の方なのに、賢の瞳の端が涙で滲んでいる。



「…賢ちゃん!」



美里は堪え切れずに、賢の腕の中に飛び込んだ。



「ごめんね…」



美里は賢の胸に顔を押しつけて泣いた。



白衣に染み込んだメチルアルコールの匂いが、美里を汚れの知らない少女に戻していく。