一人になった途端、力が抜けた。
その場にがっくりと膝をついてうなだれてしまいたかった。
ヨロヨロと歩き出した美里の目に映ったのは、ケヤキのツリーの電飾に照らし出された白衣姿の男の子。
下がった目尻、反り上がった鼻、皺くしゃの笑顔。
そうだった。
いつもいつも土壇場で駆けつけてくれるのは、勇介ではなかった。
「賢ちゃん…」
賢は手にしたネイビーブルーのマフラーを、美里の首にふわりと巻きつけた。
「風邪ひきますよ」
美里は身動きすることもできず、賢の目をじっと見つめ返した。
その笑顔の奥にある賢の瞳が憂いを帯びて哀しく揺れる。