次の句がつけなかった。
賢は宙を睨んだまま、毅然と言い放った。
「美里さんが誰を好きになろうが、俺には何も言う権利はない。
ただ…勇介だけは許せない」
美里は愕然とした。
とても賢の発した言葉とは思えなかった。
「わたしだって許せないでいた。軽蔑もした。
でも、それは不幸な境遇のせいなの。周りの大人達が彼を追いつめたの。
だから人の幸せを喜べないの。人をうまく愛せないのよ。
わたしだって彼の立場だったら…」
賢はきっぱりと首を振った。
「不幸な環境に育ったから何をしたって許されるっていうのか。
いや、だからこそ、人の気持や優しさを敏感に受けとめられる人だっているはずだ」