賢は亜弓のことでは、かなり心を砕いていたようだった。



詳しいいきさつを語りながら、何度か拳を握りしめた。



「わたし、少しでも力になってあげたいの。

ううん、亜弓ちゃんだけじゃない。

両親の愛情に恵まれなかった子供達のこと、もっと知りたいの。

こんなわたしに何ができるのって笑われるかもしれないけど…

でも、何かしないではいられないの!」



思わず感情的になった自分に、美里自身が驚いた。



一方、賢は美里の言葉を深く受け止めていた。



そして、何度も言いかけては言葉を呑み込み、最後にこう言った。



「それは…勇介のためかな」



「えっ…」



そんなつもりではなかった。



それでも賢にそう言われて、美里は今までずっと胸の奥で引っかかっていたものがポロリと剥がれ落ちたような気がした。



「そういうわけじゃ…」