美里は大きな深呼吸をした。



目を閉じ、ゆっくりと五秒数えた。



もう一度自分自身に問いかけるために。



しかし、最初に美里の瞼の裏に浮かんだのは勇介でも賢でもなかった。



仮面を被った亜弓の遠い目だった。



亜弓ちゃん!



美里はキャンパスへと踵を返した。



勇介を愛してると確信した一方で、まだ賢に未練を残している自分がいる。



そんな賢に、どんな態度で、どんな風に話しかければいいのか、何一つ答えはなかった。



が、とにかく賢に会って亜弓の居場所をつきとめたい。



そう強く思った。



今、願いがたった一つ叶えられるとしたら。