『勇介はあたしの命よ』
そう言い放った瑛子の横顔に自分が重なった。
電流が走ったように、美里は取手から手を離した。
『あんたとは生きる世界が違うのよ。感じ方も考え方も違って当然なのよ』
生きる…世界。
生きる世界を乗り越えるってそういうことなのか。
感じ方も、考え方も、すべて捨ててしまうくらいの覚悟がいるってことなのか。
それでいいの?
それで本当に幸せなの?
わたしには分相応の幸せがある。
地に足をつけ、しっかりと自分を見つめ、同じ歩幅で歩める人が…
賢の懐かしい笑顔が脳裏をかすめ、美里は思わず頭を振った。
いったい何なの?
わたしはたった一人の人を愛することもできないの?