返事も聞かず、自信たっぷりに去っていく勇介の大きな背中を呆然と見送る美里。
二人が…違う、夢を追う?
そんなことが…
ううん。わたしはそんな器用じゃない。
いったん彼の愛を受けとめてしまったら、きっと自分を見失ってしまう。
ダメよ、会いに行っちゃダメ。
呪文のように言い聞かせながら店を出た。
『その時、ようやくわかったんだ。真中……俺は、おまえを、愛してるんだと…』
『本当に大事なものから逃げないと決めたんだ。たとえ、それが誰かを傷つけることになったとしても…』
相変わらずのんびりとした時間の流れる大学通りで、美里は消しても消しても浮かび上がる勇介の残像と闘っていた。