「ああ。そうだな。
でも、俺は本当の気持をもうごまかさない。
本当に大事なものから逃げないと決めたんだ。
たとえ、それが誰かを傷つけることになったとしても…」
そう言って、勇介は自嘲的に笑った。
「ふん。口では何とでも言えるか。
おまえには瑛子とケリをつけてから会いにいくつもりだった。
休学届を出しに行った大学で出くわすなんて、ったく予想外だったから」
「ケリをつけるって何なの?
井ノ原くん、いっつもそうじゃない。
自分の気持を一方的に押しつけるだけ。
人の気持なんて聞こうともしないの」
勇介は小首を傾け、美里の顔を覗き込んだ。
「そんなことは聞くもんじゃない。
感じるもんだろう。
おまえのことだ。
賢を愛していたのなら、俺の讒言などとっくに乗り越えてるはずじゃないのか。
それとも、俺のことなど何とも思ってないとでも…」