自転車の鍵を外そうと腰をかがめた瞬間を狙いすまし、突風が遅いかかる。
プリーツ加工されたロングスカートの裾はバルーンのように膨れ上がり、剥き出しになった首筋にゾクゾクッと悪寒が走った。
「さむーいっ!」
美里は慌てて、いったん家の中へと引き返した。
駅までは川べりからの吹きっさらしの道が延々続く。
防寒具なしではとても耐えられそうにない。
マフラー、マフラー…
部屋中を引っかき回すだけ引っかき回したが、普段の無精もたたってなかなか見つからない。
電車の時間は刻々と迫ってくる。
今朝の一限目は教育心理学、遅刻にうるさい嫌味な教授だ。
あーもうダメ。