賢は俺の言ったことを笑い飛ばしてくれるだろうか。



いや、あいつは不器用なくらい純粋で真っ直ぐなやつだ。



真中を愛するが故に、真中を信じることのできない自分を責めるだろう。



真中は真中で、賢に引け目を感じ続けるだろう。



あんなに幸せそうだった二人の笑顔を、未来を、血迷った俺の一言が…



雨の雫が鼻の頭にポツリと当たったかと思うと、二、三分もしないうちに本降りになってきた。



軒のない外廊下で、勇介はしばし雨に打たれる感触を愉しんだ。



粉々に砕けた嫉妬の欠片を雨が優しく包み込んでくれる。



からだの火照りはいくらかマシになったが、胸の炎は消えやしない。



ガソリンでもかけられたように、ますます激しく燃えたぎっている。



たった一つわかったことは、真中美里を愛している―ということだった。



他の誰でもない彼女だけを、激しく、狂おしく、心の底から追い求めているということだった。