美里が上目遣いで笑ってみせると、男は照れくさそうに帽子の上から頭をポリポリかいた。



ふーん。今どきこんな天然記念物みたいなやつ、東京にもいるんだ。



ま、オタクにしては爽やかな方かな。



美里はストーカー男の不気味な表情を思い出し、思わず身震いした。



「ねぇ、社学の教室まで送ってもらえる?」



「え…あ、あの、きみは?」



「あたしは社会学部マスコミ学科」



「マスコミ?!」



男は一重の細い目をめいっぱい見開き、新種の生物でも見つけたように、美里をまじまじと見つめ返した。



「う、うん。でも、芸能関係じゃないわよ。専攻は社会心理学」



「はぁ…」