ミニといっても、裾を切りっ放したジーンズ地の色気のないやつで、膝がやっと見える程度の丈なのだが、座ると10センチは軽く上がる。



その上、敵は1メートルも上から優位に立って、こっちを見下ろしているのだ。



こいつ、いつからここにいたんだろ。



目を閉じても、なお一層強く感じる淫靡な視線に鳥肌が立つ思いだったが、慌てふためいて逃げ出す所を見られるのは、もっと許せない気がした。



完全に無視すること。



それが今、彼女に考えうる唯一の抵抗であり、この手の男への一番効果的な報復であると知っていたからだ。



チェックのシャツを股上の深いジーンズに挟み込み、斜め掛けショルダーに銀縁眼鏡といういでたちは、一見どこにでもいるオタク青年の典型的なパターン。



が、彼の場合、色白さを際立たせる青い髭剃り後と、だらしなく緩んだ赤い唇のコントラストが、一度見たら忘れられない不気味さを放っていた。