浮いた話とは一番無縁そうなトッチャン坊やが話題の中心になると、そんなことなら我も我もと自慢大会の始まりだ。
それを傘に着るようなやつではないが、修司とて銀座に店を構える和装小物屋の三代目だ。
男を外見でしか判断しない女子大生と違い、やはりOLさんは現実的である。
あれほど注目の的だった勇介だけが、気がつくと一人蚊帳の外になっていた。
手持ち無沙汰の分、つい飲み過ぎた。
トイレに立った帰り、薄暗い通路で聞き捨てならない話を耳にした。
「あいつ、家の話になると急に口つぐんだろ。きっと生まれが卑しいんだな」
「ははっ、そうだそうだ」
「卑しくて悪かったな」
勇介の押し殺したような低い声に、二人の男は凍りついた。
「俺は何も、こいつが…」