その時―
バタン!
小屋の扉が開いた。
そして、そこに、平家の落武者のような男が仁王立ちになっていた。
「博士!」
亜弓はずぶ濡れになった賢に飛びついた。
「大丈夫だったか?」
賢は亜弓のからだをいったん離し、かがみ込んでその顔を眺めた。
「うん、わたしは大丈夫」
「そっか、よかった…」
賢はもう一度、亜弓を抱きしめ、慈しむように背中をポンポンと叩いた。
「でも…先生が、怪我を…」
亜弓が振り向き様、賢と美里の視線は弾けるように熱く絡み合った。
賢は美里が座っているベンチへとゆっくり歩み寄った。
「…美里さん」
美里は何かに操られるように立ち上がった。
「賢ちゃん…」
わっと声を上げて賢の胸に飛び込みたい。
そんな衝動が突き上げた直後のことだった。