「そんな嫌な女じゃないよ」



「え?」



美里は亜弓を振り返ったが、亜弓の方はまだ天井を見上げたままだ。



「先生は自分の気持に正直なだけだよ。

それに、こんなわたしにも、ヤなことも隠さないで、本当のこと言ってくれた。わたし、すごく嬉しかった…

先生だったらいいよ。博士のお嫁さんになっても」



「亜弓ちゃん…」



二人が赤い目を見合わて微笑んだ時、ポケットの中で着信音が鳴った。



「もしもし、もしもし!賢ちゃん!?」



慌てて取ったが、ガーガーピーピー雑音がひどくて聴こえない。



雨風は激しくなる一方。



くじいた右足首から先の感覚がなくなってきている。