美里は自販機にコインを落としながら、気がつくと話し出していた。
「博士とは、ちょっとしたきっかけで、気がついたらなんとなく始まってたって感じなの。最初は恋人の真似事みたいなのが楽しくてね。
でも、そこへ初恋の人が現れて、好きだって言われて、わたし、舞い上がってしまって…
でも、その人とは環境が違い過ぎて、そのせいかどうだかうまくいかなくて…すごく落ち込んでたの。
今日だって博士に合わせる顔なんてないんだけど…どうしてもって頼まれたら断り切れなくて…
っていうか…アッチがダメならコッチなんて計りにかけて、本当の自分の気持から逃げてるのかも。
はぁー、つくづく嫌な女ねぇ~」
亜弓は慰めるように言った。
「きっと、カッコイイ人なんだね」
「うん…悔しいけどね」
「ふぅん。博士、可哀想…」
「えっ?」
「だって相手がイケメンじゃ、勝目なさそうだし」
二人は顔を見合わせて笑った。