亜弓の眼差しの中に再び勇介の姿がちらつき出すと、美里はもう何を話していいのかわからなくなった。



下手な励ましは通用しないだろうし、かと言って楽しい話題を探す元気も残っていなかった。



自販機のウーンという電気音だけが、小さな空間で唸り声を上げていた。



缶コーヒーを飲み干した美里が、今度は熱いお茶をと財布に手をかけた時、



「先生…」



「えっ?」



亜弓から先に声が出たことに驚いた。



「どうしたの?気分悪い?」



「ううん…」



みさとの驚きようを見て、亜弓は少し口ごもった。



が、数秒後には、しっかりとした口ぶりで意外なことを言ってのけた。



「先生って、ほんとに博士の彼女なの?」



美里は絶句した。



こんな時に、何てこと言い出すんだろう。



そんなことより、助かるのとか、怖いとか、もっと他に言うことがあるだろうに。



いや、そんなことを考えないために、わざとこんな話題を?



まさか…ね。