手分けして心当たりの近場を捜したが、見つからない。



そのうち雲行きが怪しくなってきた。



もし、どこかで足を踏み外してたら、誰かに連れ去られてたら、もう、見つからなかったら…



美里は震える胸を押さえ、目を閉じた。



電車の窓から景色を見つめていた亜弓の寂し気な横顔が脳裏をよぎる。



彼女の怯えているような、諦めているような…



それでいて何かを求め続けているような切ない眼差しを、どこかで見たような気がしていた。



それにようやく思い当たったのだ。



瑛子だ―



顔のつくりは違うが、瑛子がときおり放つ遠い目は、確かに亜弓のそれと同じだった。



「亜弓ちゃーん!」



美里はそう叫びながら駆け出した。



木々をくぐり抜け、降り出した雨に打たれ、濡れた土を削りながら。