ヒソヒソと楽しそうに語らう二人を見つけた悪ガキ共が、次々に連なって賢のお尻を蹴り上げていく。
「フーフーッ」
「熱い熱い」
「ダメよ、賢ちゃん、こんなとこで×××出しちゃ」
優しい賢もついに切れた。
「てめぇらなぁ!」
怒声が車内に響き渡った。
「ヤバっ、逃げろ!」
子供達が賢の腕をすり抜け、隣の車輌へ逃げ込むと、乗客の非難めいた視線がいっせいに賢へと向けられた。
「あ、ども、すいません。ほんと、ご迷惑おかけしてます」
しどろもどろで頭を下げている賢を尻目に、美里は再び亜弓の方へと視線を戻した。
その遠くを見つめる眼差しをどこかで見たような気がしたが、それを思い出そうとしているうちに電車は終点の駅に着いた。