携帯の電源を切り、誰とも連絡を取らずに引きこもっていた美里は、伯母から
「あんたに急用だって」
と、渡された自宅電話の子機から聴こえてきた賢の勢いに負け、なし崩し的に約束を取りつけられてしまったのである。
あー、ここ最近、ろくに栄養のある食事なんか採ってないのに。
太陽の光を見ただけでクラクラするくらいだっていうのに。
こんな生意気な小学生を二十人も引き連れて山登りなんて、あり得ない!
っつうか、無理!
あーもう、帰りたい…
ふと、車内に視線を戻した時、まるで鏡の中の自分の姿を見ているような光景に出会い、美里は「あっ」と小さな声を洩らした。