付き添いにもかかわらず、すっかり投げやりな気分で子供達から距離を置いた美里は、電車のドアの窓から流れゆく景色を眺めながら、気がつけば勇介のことを考えていた。
風の噂では聞いていたが、勇介がそれほど孤独な日々を送ってきたとは知らなかった。
確かに父親の失踪で一家が大変なことになったということは想像に難くない。
が、それより何より、勇介が自分に何も言わずに去ってしまったことに彼女は傷ついていたのだ。
何故、彼が不幸な生い立ちを話してくれなかったのか。
何故、行き先も告げずに行ってしまったのか。
それは、自らの喜びや痛みだけが物事を推し量るバロメーターで、他人の苦悩に気づきもしない。
世間知らずで、あまりにも幼稚だった自分にあることを初めて思い知ったのだ。