彼が今までどんな暮らしをしてきたのか。



経済的に余裕があるとは思えないのに、どうして東京の私立の大学に進学できたのか。



今までどんな女の子と、どんな風につき合ってきたのか。



何が好きで、何を考え、何のために生きているのか。



勇介のすべてを知りたいという欲望はとめどなく膨らんでゆく。



本音がプライドを押し退けた。



美里は瑛子の交換条件を呑み、勇介との出来事の中から最小限の事実だけを淡々と話した。



一方、瑛子の話は美里にとって衝撃的なものだった。



家計を支えるため、母親が夜の勤めに出るようになったこと。



そこで知り合った客と再婚したが、相手は母より二回りも年上のスケベ爺だったこと。



再婚に反発した妹が問題行為を繰り返し、児童相談所送りになったこと。



新しい父親は関西では名の知れた実業家で、いかにも善人面して進学を勧めてくれたが、実は目障りな勇介を追い出すための口実だったこと。