切れ長の目が鋭く光る。
「大事なものって、何だよ」
美里は勇介の挑むような眼差しを真っ直ぐに見つめ返した。
言葉にすると気恥ずかしいが、それでも今、勇気を出して言わなければならない。
「人の気持とか、本当の自分の気持とか…人を…愛することとか」
勇介は突然笑い出し、そのままベッドから滑り落ちた。
「はははっ、おまえに人の気持がわかるってか」
「そうは言わないけど…少なくとも、話し合ったり、悩んだり、わかり合おうと努力するわ」
美里はすすけた天井を仰ぎながら言った。
こめかみから首筋へと涙が伝う。
「俺は直感で生きてるんだ。あいにく努力は嫌いでね」
「バカっ!」
美里は泣きながらアパートを飛び出した。