「もともと大して好きでもなかっただと?
そう言われた方が参るぜ。
とんでもないやつに持ってかれたって俺のこと恨む方が、あいつだってどれだけ救われるか」
「でも、それじゃあ…」
「おまえの気が済まないってか」
勇介は眉間に深い皺を刻み、これ見よがしにハーッと大きなため息をついた。
「だから優等生気取りのやつは嫌なんだよ。
妙な正義感ふりかざしやがって、結局は自分の気が済めばいいんだろ。
本当に傷つくやつのことは見て見ぬふりか」
しゃべるほどに勇介の苛立ちは高ぶっていく。
「やめて!」
美里は耳を塞いだ。
「わたしは優等生じゃないし、正義感ふりかざすつもりもない。
ただ、自分の気持に正直でいたいだけ。
でも、できる限り周りの人も傷つけたくない。皆が幸せになってほしい。
だから悩むんじゃない」