「どうしたの?!その顔」
「あ、そっか。美里さん、初めてだっけ。俺、夏に四国帰ると毎年こうなるんです」
「海、で?」
周りの視線を感じて、美里は小声になった。
「それが、サーフィンで…なんて言えればかっこいいんだけど。
虫籠持って四万十川を一日中駆けずり回ってまして…」
頭をポリポリかきながら照れ臭そうに笑う顔が何だか懐かしくて、美里はくじけそうになった。
「わたしは…就活なんか、したりで…ずっと忙しくて」
「大変だった?あっ、俺もアイスコーヒー」
一ヶ月も会ってなかった彼女に、今にも別れを告げられようとしているというのに、賢の屈託のない笑顔には疑心暗鬼とか、陰りとか、マイナス要素がまったく見当たらない。
美里は萎えそうになる気持に鞭打った。
「あ、それで…その…」