大学通りの喫茶店のカウベルをカンラカンラと派手に鳴らし、賢が入ってきた。
「ひゃあー、涼しい~。あ、実験が長引いちゃって。ごめんごめん」
九月に入ったとはいえ、まだ昼間は相変わらずうだるような暑さだ。
痩せてるくせに汗っかきの賢は、肩までたくし上げたTシャツの袖でしたたり落ちる汗を拭いながら、美里の向かいに腰掛けた。
まともに目が見れず、なんとなく視線を上げたその時、
「わっ!」
思わず叫んで、両手で口を覆った。
賢の顔が、絶対日本人とは思えないほど真っ黒だったのだ。
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