夏休みという夢から覚めると、美里には対峙しなければならない二つの厳しい現実が待ち受けていた。



一つは前期試験。



しかし、これは今までの経験とマニュアルと数日間夜を徹する体力さえあればなんとかなるだろう。



もう一つの現実は彼女にとってまったく未知数で、予測のつかないやっかいな問題となった。



男に別れを切り出す。



つまり、賢との関係にきっぱりかたをつける―ということだ。



関係といっても、肉体関係どころか、手すら握ったこともない。



賢はまだ、美里の顔を見るだけで嬉しいというような初々しい段階だったし、美里は美里でそんなあやふやさを楽しんでいる所もあった。



友達とは言い切れないが、恋人とも言えない。



そんなデリケートで微妙な関係を、である。