一夜が明けた今日。
真人くんの命日だ。
目が覚め、わたしが持っている中でも綺麗な服を身に纏って出かけた。


待ち合わせより、十分前に法円寺に着いた。
雅人くんは、もういた。
「おはよう」
「うん、おはよう」
挨拶を交わすと、桶を持ってお墓に向かった。
わたしは、向かう途中に花屋で百合を買った。


お墓に近づくと、人影が見えた。
それを見ると、雅人くんは、動きを止めた。
「とう、さん?かあ、さん?に、おばあちゃん…?」
なんと、その人影は雅人くんのご両親と祖母だった。
3人は、わたしたちに気が付くと目を見開きつつもこちらに歩み寄ってきた。
「雅人?それに、唯菜さん、でしたっけ?」
「あ、はい!」
雅人くんのおばあさんに聞かれ、返事をした。
「雅人…」
雅人くんと真人くんのご両親は、2人にそっくりだった。
目元が優しいところなんかは、特にそっくりだった。
「父さん、母さん。何しに来たわけ?」
「墓参り、だ」
雅人くんのお父さんが言った。
「雅人。実はね、わたしたちずっと真人の命日にはこうしてお墓参りをしていたのよ…」
雅人くんのお母さんがそう言うと、雅人くんの顔は意味が分からないという表情を浮かべた。でも、次の瞬間声を上げた。
「何を今更!真人は、ずっと苦しい中一人で戦ってきた!でも!あんたらは、仕事に没頭したじゃねぇか!真人は、優しいから出迎えてくれると思うが、俺はあんたらの事を親と思ったこともない!ただ、俺は…」
段々声量が収まり、最後にポツリ「傍にいて欲しかった…」と言うと雅人くんのお母さんは雅人くんのところに駆け寄ってぎゅっと抱き締めた。
「雅人…。ごめん、ごめんなさい…。ごめんなさい…。わたしは、最低ね。我が子にこんな思いをさせて…。親失格ね…」
「かあ、さんっ…!」
「まさっ、とっ!」
続けて、お父さんも駆け寄ってぎゅっときつく抱き締めた。
「ごめんなぁ。父さん、最低だな…」