「真人、くんっ!」
泣きじゃくった。まーくん、わたしと両思い、だったんだ!
「唯菜」
ギュッと雅人くんに抱き締められた。
温かい温もりが全身に伝わってきて、また涙が出てきた。
その涙は、少し悲しみの混じった温かい光のような涙だった。



「唯菜、ゲームしよう」
「え、何で…?」
気分転換のつもりなのかな…?
「やりたいっていってたでしょ…?」
「そう、だけど…」
「やりたくない、かな…?」
「ううん!やろ!」
雅人くんは、バックからゲーム機を取り出してくれた。
やるゲームは、車のレースらしい。


初めてやるからわからないことだらけだったけど、雅人くんが操作方法を教えてくれた。

「え、うまっ!」
「そう?雅人くんも上手いよ」
わたしの手さばきが良かったのか褒め言葉を貰った。
「ありがと」
照れてるのか顔を赤らめてお礼の言葉を雅人くんは言った。
結果、わたしと雅人くんは同首位で終わった。


「ねぇ、何これ?」
わたしが指を差しているのは、『fighting』というものだ。
格闘って意味だったような…。
「あ、それは格闘ゲー厶。人をキックとかパンチとかでコンピューターかプレイヤーを倒すんだ」
「格闘、ゲーム…」
楽しそうっ!
まず、そう思った。
やってみたい!
雅人くんに言うと、驚きの声を出していたが良いよと言ってコマンドを教えてもらった。
とりあえず、少しガチャガチャ音になったがなんとかコンピューターの初級を倒すことが出来た。
「ここで、パンチを繰り出すと倒せるよ」
中級が思ったよりも強くて、ダメージを受けまくっていると雅人くんが助け船を出してくれたおかげで何とか相手にワンラウンドを勝ち取ることができた。
その波に乗り、戦うと中級を倒すことができた。
上級は、さすがに強すぎてワンラウンドは取ったものの巻き返されてしまい、逆転勝利されてしまった。
少し不機嫌になっていると、雅人くんが褒め言葉を言ってくれたのでご機嫌が直った。
あ、これは言わなくちゃ。
「雅人くん、わたし退院することになったの」
「本当か!?」
「うん!だから、真人くんのお墓参りとか色々な事が出来るよ!」
「あぁ!行こう!」
わたしは、退院の日の翌日が楽しみで仕方がなかった。
ただ、最後の退院ということはずっと矢のように胸に突き刺さっていた。


透明化は、膝辺りまで進んでいた。
最後の春と夏は、人生最高の季節になるだろう。