まーくん。
その人だ。
雅人くんのお兄ちゃんと言っていた。
なら、雅人くんに聞けば分かるはず。
早速、雅人くんに一通の連絡を入れようとする。
でも、その前に雅人くんから連絡があった。
【病院に行く】と。
病院に行くと宣言したのは、初めてなので少し不思議がってしまう。
そこから、数分後雅人くんは宣言通りにやってきた。
ショルダーバッグを肩に掛けていて少しかっこいいと思った。
「おはよー」
「おはよ、唯菜」
「あ、あのさ…」
わたしから話をし始めた。
「"まひとくん"ってわかる?」
そうだ。まひとくんだ。忘れてた。
わたしの問いにゆっくりと雅人くんは頷いた。
「真人だろ?俺の兄だよ」
「うん。今、どうしてる…?」
少し、言葉に詰まったような顔を一瞬、浮かべた。
「どう、だろうな…」
兄のことなのに、知らないの…?何で…?
「真人くんのこと知らないの…?」
「真人は、もういないんだ」
その言葉を聞いた途端、胸に何かが重くのしかかった。

"いない"。
つまり、死んでしまったということ…?
「死んじゃったの…?」
「うん」
死んだ。
もう、会えない、のか。
「唯菜」
「これ」
そっと差し出されたのは、ゆいなちゃんへと書いてある幼い誰かの字が書かれた便箋だった。
「これっ…」
「真人が、書いた最初で最後の手紙っ…」
「真人、くんが…?」
「そう!読んで、ほしい…」

綺麗に便箋を開け、開くと1枚の手紙と1枚の桜の花びらが入っていた。
花びらは、だいぶ色褪せていて桜とは分からない。でも、わたしは桜の花が好きだから分かった。
そして、雅人くんに聞くと真人くんも桜が好きだったらしい。


花びらを大事に便箋にしまい、手紙を読み始めた。