ねぇ、私17歳なんだよ?







いつまでも妹扱いしないで







好きなの。賢お兄ちゃん




ずっと、ずっと好きだった


でもいつも妹扱い



12歳も上だけど、この気持ちは真剣なの




でも、賢お兄ちゃんの瞳は違う人を追いかけていた

朝野 ひかりさん




お兄ちゃんの後輩で、今は同僚の人




こっそり見たことがある




大人っぽくて、カッコよくて




私とは全然違う人

賢お兄ちゃんはずっと彼女のことを見ている



ずっとお兄ちゃんの心の中にはひかりさんがいる







悔しくて、切なくて


そして羨ましい




あんな風にお兄ちゃんに愛される人が
賢お兄ちゃんが風邪をひいたからと

母親に頼まれた果物を持って久しぶりに賢お兄ちゃんの家へ行く




鍵はかかっている


寝ているのかな







果物だけおいて帰ろうと思ったとき


背の高い細みの女性が近付いてきた




あ、

「えーっと」


この人が


お兄ちゃんの好きな人






「あ、えーっと。賢お兄ちゃんの幼なじみで、妹みたいなもので…お母さんに頼まれて果物届けに来たんですけど、カギかかっているから帰ろうかなと」




何言ってるんだろう私



「そうなんだ。ありがとう。寝てるんだろうから今鍵開けるね」







ひかりさん




合鍵持ってるんだ





それだけお兄ちゃんと近い距離にいる人

鞄から取り出した鍵で玄関をあけひかりさんは中へ入っていく




「会長?大丈夫です?」



何回も来ているのだろう


迷わず足を進めていく







「朝野?」



パジャマ姿に寝ぐせのついた髪


少しだけ無精ひげを生やした賢お兄ちゃんが


寝室から出てきた

「会長。医者の不養生もほどほどにしてください。熱は?一応点滴と薬持ってきたんですけど?」

少しふら付く賢お兄ちゃんの身体(からだ)を支えるようにひかりさんが近づく

「昨日よりは下がった。悪いな。……千里(ちり)?」





お兄ちゃんが視線だけを私に向けた


でもそれは…




「千里ちゃんっていうの?」





ひかりさんの声が尖っていた空気を少しだけやわらかくした




「はい。賢お兄ちゃん、これお母さんから」

玄関先に持っていた袋を置くと、


早く治してね






それだけ言って


全速力で家まで帰った