この学校には何でも完璧な人がいる。俺もまぁまぁ完璧だと思うが、彼女には負ける。特に学力。俺はずっと2位で1位の彼女をなかなか抜かせない。そんな彼女の秘密を1つだけ、俺は知っている。
「なぁ、朔。俺今日、姫乃さんに告ってくるわ。」
「え…?まじか。応援してるわ。」
学校一のモテ女と言われている人姫乃紗奈。そう、俺のライバルだ。彼女の秘密、それは―――。

俺は彼女の事を少し前から知っている。彼女の存在を認知したのはあることがきっかけだ。俺が高高1年の頃、いつも通り靴を履いて学校の昇降口を出た所だった。
「好きです!付き合ってください!」
突然俺の耳に大きな声が飛んできた。告白か。告白の現場は誰であっても見てみたいものだろう。俺もその1人だ。どんな人が告白されているのか。覗いてみると、そこに彼女がいた。どう返事をするのか気になって聞いていた。彼女の表情は顔色1つ変えなかった。冷静な顔。悪く言えば嬉しく無さそうな顔。俺はそういうふうに感じ取ったからてっきり告白は断ると思っていた。そんな中、彼女が出した結論は耳を疑うものだった。
「告白してくれてありがとう。私も君と付き合いたいな!」
俺は演技しているようにしか見えなかった。わざと声色を明るくし、可愛い感じにしているようにしか感じ取れない。告白した相手は、勿論嬉しそうにその場を去って行った。不信感を感じた俺は、少し彼女に声を掛けようと思って近付いてみようとすると彼女はスマホを取り出した。
『今から帰るから待っててね♡』
スマホの画面にはそう彼女が書いて送信したものが映っていた。俺は声を掛けることはできなかった。どういうことだ。もう1人彼氏がいるのか…?男はそのことを知らないのか?だとしたら相手の男が可哀想過ぎる。彼女は屑…なのか??分からない。俺の頭はグルグル思考を巡らせた。どれだけ考えても彼女の考えていることが分からない。そう考えていたら彼女は歩き出してしまった。俺は彼女のことが知りたくなった。好奇心ってやつだ。
「姫乃紗奈…。調べがいがありそうだな。」
このことは誰にも言わない。彼女の秘密を知っているのは俺だけ。そのステータスが俺にとっての快感だった。
***
そして今日、俺の友達が彼女に告白する日だ。机の中に手紙を入れたらしい。放課後屋上で告白、ベタな流れだ。友達にこっそり見ていてくれ、と言われたものだから、屋上への扉の前で耳を澄ませて聞いていた。
「付き合ってください!」
きっと彼女はOKするのだろう。その予想は的中した。
「良いよ。」
やっぱり…。俺の友達はとても喜んでいたが、俺は複雑な気持ちになった。友達がこっちに走ってきた。満面の笑みで。
「朔!告白成功だ!早く俺に追い付けよ?非リア。」
何だ此奴。と思いつつも言わずに彼を通した。彼女は屋上で1人になって空を見上げていた。今日は声を掛けるチャンスじゃないか?俺の頭にふと浮かんだ。彼女を知りたい。この好奇心だけでここまでの原動力になるのか。人間分からないものだ。彼女を知りたい。これだけだ。恋心なんてない。
「ねぇ、そんなに身を乗り出したら危ないよ?分かんないの?」
俺は心を決めて声を掛けた。彼女はとても驚いた顔でこちらを向いた。その瞳は快晴の時のように澄んでいて、とても綺麗で惹き込まれそうだった。