「どのようにして忍び込むのですか。相手は夜城家の人間でございますよ」


「それはセージが勝手に言ってるだけでしょ!夜、寝てる間なら忍び込めるかもしれないっ」


「無茶です、お嬢さま」




 止める声を無視して、バッグからヘアピンを取り出した。

 ピッキングなら、できるかもしれない。

 この前、警戒対象が使う警備突破方法を知ることを目的として、ピッキングの体験授業があったから。


 この時期は寮でピッキングを試す生徒が出てくるから、って厳重注意されたし…寮部屋の扉はピッキングで開けられるってことだよね?

 私は完全に夜が()けるのを待って、日付が変わるころ、静かに自分の部屋を出た。

 セージから聞いた、壮士センパイの部屋の位置は…。




「ここ、か…」




 表札にも八代(やしろ)壮士(そうし)って書いてあるから間違いない。

 私はポケットからヘアピンを取り出そうとして…ごくりとつばを飲んだ。

 壮士センパイに気づかれたらなんて言おう?